カリフォルニア

【歴史】

 アメリカのワイン造りの歴史はまだ新しい。本格的なワイン造りが始まって200年ほどでしかない。4000年の歴史を持つヨーロッパとは比較しようもないのだが、その生産量は今日世界第6位で国民一人当たりの消費量は1985年で9.2リットル。生産地はカリフォルニア州をはじめ、ニュヨーク州、イリノイ州、ニュージャージ州、オレゴン州、ワシントン州などがめぼしいところだが、この他にも全米殆ど半分の州で僅かだが生産されている。しかし、カリフォルニア州が全米のワイン生産量の90%(年間約260万kl)を生産し、残りを各州で分け合っているに過ぎない。>アメリカのワイン造りは当然の事ながらコロンブスの新大陸の発見によって16世紀にヨーロッパから移民が始まったときからである。植民者たちは故国への郷愁を込めて東部や南部の開拓地で野生の葡萄を使ってワイン造りを試みた。しかし、これは「フォキシー(狐臭)」と呼ばれる異臭が出て、しかも糖度も低くて酸っぱくて飲めたしろものではなかったらしい。その後、ヨーロッパの優れた葡萄を移植し、栽培、醸造を試みた。だがこれも高温、多湿の南部では害虫にやられ、東部でもフィロキセラ虫害に煩わされ、北部では寒すぎて、惨めな結果に終わったようだ。
 アメリカのワイン造りが発展していったのは西部のカリフォルニアからである。1760年代になって、メキシコを領有したスペイン人が次第に領土を広げて中央アメリカから合衆国までその勢力を伸ばしてきた。それと共にイエズス会の伝道士たちがやってきて、サンディエゴ付近でスペインから持ってきた葡萄を栽培し、ミサ用のワインを造り出したのがカリフォルニア・ワインの始まりと言われている。伝道士たちの北上に従って、葡萄もロスアンゼルスからサンフランシスコ湾周辺に広がり、今日のナパ・ヴァレーまで及んでいった。ヨーロッパのワインが中世の修道僧によって普及していったのとよく似ている。
 1849年のゴールドラッシュは、このワイン造りに拍車をかけた。フランスをはじめヨーロッパ各地からの一旗組が西部に流れ込み、その中からワインを商売にしようとする人々が現れて葡萄栽培が本格化し始めたのである。
やがて、大陸横断鉄道が開通して西部のワインの名声が東部に伝えられワイン需要が急速に増えてカリフォルニア・ワインの第一次黄金時代がやってくるのだが、これは同時に生産過剰を生むことになった。そしてヨーロッパから大量に移植された葡萄からフィロキセラ虫害が発生してアメリカワイン生産の不幸な時代が始まったのだ。カリフォルニア大学ディヴィス校の農学研究所と州が協同で州立葡萄栽培委員会をつくり、ヨーロッパからフィロキセラに強いアメリカ品種台木に接木する栽培法を逆輸入してようやく再興したのは1900年であったが、災難はそれで終わらなかった。
 1912年に施行された禁酒法が漸く立ち直りつつあったワイン造りに決定的な打撃を与えたのだ。33年まで続いた禁酒法の間に多くの醸造家も葡萄栽培農家も離散し、加えて1929年の世界経済恐慌がカリフォルニアの農業生産に混乱をもたらした。
荒廃しきったワイン産業の再建がようやく始まったのは1934年に前述したカリフォルニア大学ディヴィス校農学研究所を中心としたワインスティテュートが設立されてからである。しかしその復興は遅々として進まず、すぐれた醸造家の少なくなったワイナリーで造られる粗悪なワインは消費者をますますワインから遠ざけていったのである。
アメリカワインの本格的な再スタートは、第二次世界大戦後と言っていいだろう。大資本の投資がワイナリーに行われ、まず、大衆好みの甘口デザートワインや果物ジュースと混ぜてパンチもつくれるワインなどの大量販売によって大衆の関心をワインに向けさせることから始められた。これはワイン新興国のどこでもたどる道である。産量、消費量ともに飛躍的に増大しアメリカ人の生活の中に定着していったのである。


【葡萄品種】

白ワイン用葡萄品種
1.シャルドネ 
栽培量は第3位だが、価格は最も高く、白ワインとしては最高級。
2.シェナン・ブラン
病害に強く、収穫量が期待できる、カリフォルニアにおいても成功を収めた品種。
3.エメラルド・リースリング
カリフォルニア大学ディヴィス校のオルモ博士によって、1946年紹介された品種。
4.フローラ
カリフォルニア大学ディヴィス校で開発された品種
5.フォル・ブランシェ
主にブレンド用に用いられ、成育シーズン半ばで収穫できる非常に栽培しやすい品種。
6.フレンチ・コロンバード
生産性の高い品種で、しかもフルーティで爽快な酸を合わせ持っている品種
7.ゲヴュルットラミナー
ドイツ及びフランスのアルザス地方で栽培されている品種で、カリフォルニアの土壌、気候風土にも良くあった品種。
8.グレイ・リースリング
フランスのジェラで造られている品種で、主にサンフランシスコ近郊で栽培されている。
9.グリーン・ハンガリアン
原産地不明の葡萄品種。昔からある品種で、いくつかのワイナリーでは、今でもこの葡萄品種を冠したワインを造っている。
10.ヨハニスベルク・リースリング
ドイツを代表する葡萄品種で、カリフォルニアにおいても多くのワイナリーが好んで栽培している。
11.マスカット・カネリ
マスカット・ブラン、マスカット・フロンティニャンとも呼ばれるマスカット系の葡萄品種。主にデザート用の甘口ワインに使用される。
12.パロミノ
シェリーの代表的葡萄品種。カリフォルニアでもこの品種からシェリーを醸造している。
13.ピノ・ブラン
個性豊かな芳香を持ち、力強い、エレガントな風味を持つ品種。
14.ソーヴィニヨン・ブラン
ボルドーの代表的葡萄品種。
15.セミヨン
主に辛口のスタンダードワインに用いられる。
16.シルヴァーナ
ドイツを代表する葡萄品種。カリフォルニアではかなり広く栽培されている。
17.ユニブラン
コニャックの原料として知られている品種。ジェネリックワインのブレンド用として使用されている。
その他、シャスラー、グリロ、インゾリア、ペヴェレラ、ショイレーベなどがある。


赤ワイン用葡萄品種

1.アリカント・ブスケ
禁酒令の期間に主に植えられていた品種。カリフォルニア南部の海岸近くやセントラル・ヴァレー中央部で今でも栽培されている。
2.バルベラ
イタリアが原産の品種で、かつては赤ワインの重要品種だったが、今では減少傾向にあるものの、ジンファンデル種に次ぐ重要品であることに変わりはない。
3.カベルネ・ソーヴィニヨン
フランスのボルドーが原産で「赤ワインの王様」としてカリフォルニアきっての高級ワインの原料葡萄品種。
4.カリニャン
スペインが原産地。カリフォルニアでも栽培面積が広く、ジェネリックワインのブレンド用として使用されている。
5.カーネリアン
禁酒令が解けた後間もなくカリフォルニア大学ディヴィス校のオルモ博士によって開発された交配種。
6.シャルボノ
イタリアが原産地。非常に栽培面積が狭い。
7.ガメイ・ボージョレ
長い間、ボージョレ地区と同じガメイ種と思われていたが、最近になってこの葡萄品種はピノ・ノワールの一種であることが分かった。カリフォルニアの気候、風土の下ではフランス のピノ・ノワールよりしっかりとした成育をし、反収も多い。
8.グレナシェ
暑い地域で栽培されており、主にロゼワインの原料に使われる。
9.グリニョリーノ
イタリア北部が原産。主にロゼワインに使用され、赤ワインには殆ど使用されない。
10.マタロ
スペインが原産の葡萄品種。反当たりの収穫量が多くバルクワインの原料となっている。
11.メルロー
ボルドーのサンテミリオン、ポムロール地区で栽培されている葡萄品種。カリフォルニアでは、カベルネ・ソーヴィニヨンにブレンドされるより、むしろ単独でヴァライタルワインとして用いられる。
12.ミッション
スペインが原産。カリフォルニアに持ち込まれた最も古い葡萄品種。かつてはカリフォルニアを代表する品種であったが、ワインとしては高級品には向かない。
13.ナパ・ガメイ
フレッシュ・アンド・フルーティな赤ワインの代表ボージョレを造る葡萄品種。カリフォルニアでも広く栽培されており、似たような葡萄品種ガメイ・ボージョレと区別するために「ナパ・ガメイ」と呼んでいる。
14.プティ・シラー
この葡萄品種単独でのワインは少ないが、ロゼやポートの原料として、また力強く個性豊かなワインとなるのでブレンドされてジェネリックワインが造られることが多い。
15.ピノ・ノワール
ブルゴーニュ地方の偉大な葡萄品種。栽培の非常に難しい葡萄品種として、まだまだ多くの課題が残されているこれからの葡萄品種。
16.ピノ・サンジョルジュ
フランスのコート・ドゥ・フロントネのネグレット種。
17.ルビー・カベルネ
’48年カリフォルニア大学ディヴィス校のオルモ博士によって紹介されて以来、カリフォルニア全域で栽培されている。カリニャン種とカベルネ・ソーヴィニヨン種を掛け合わせた交配種。
18.サルバドール
フィロキセラ害を防ぐ台木に用いられている、アメリカ原産の葡萄品種ヴィティス・ルペストリスとヴィティス・ヴィニフェラとの交配種。
19.ジンファンデル
原産地不明。カリフォルニアにおける葡萄品種の中で、最もワイン産業に貢献した品種。広範囲で栽培されており、ホワイト・ジンファンデル、ロゼ、ブラッシュなど使用範囲も広い。
その他、イタリアやスペインが原産の葡萄品種が植えられており、その多くはオーディナリーワインのブレンド用に使われたり、バルクワイン用となる。上記の他に、マルベック、プティ・ヴェルド、トルソー、ヴァルデペニャス、トウリガ、ソージャオなどがある。また、バルクワインやブレンド用として、カリフォルニア大学ディヴィス校で研究されて出来た、交配種のルバイアード、ローヤリティなどがある。


【ワインの分類】

●ヴァラエタルワイン
75%以上単一の品種を使用するワインで、その使用品種名をワイン名として記載できる。
●ジェネリックワイン
日常消費用のワインで、ブランド名に赤、白、ロゼ、ブラッシュの表示をするが、ライン・モーゼル、バーガンディ、ライン・クラーレットなどヨーロッパのワイン生産地名をワイン名にすることが出来る。
●プロプリエタリーワイン
ワイナリーが独自のブランド名を付けたブランドワイン。ボルドー原産の品種のブレンドのワインはメリテージュの総称を持ちます。
主な産地】
●メンドシーノ&レイク
太平洋岸最北端の栽培地で、品質向上中。
●ナパ
カリフォルニアのワイン産業をリードする、随一のプレミアムワイン産地。
●ソノマ
カリフォルニアのワインが産業として花開いた最初の地。ナパと並ぶ中心地。
●ノース・セントラル・コースト
シャローン、モントレーなどで質の高いワインが造られている。
●サウス・セントラル・コースト
太平洋の影響を受けた冷涼な地域で、これからの生産地。
●セントラル・ヴァレー
全カリフォルニアワインの7割が造られる大生産地。
●シェラ・フットヒルズ
ゴールドラッシュの舞台。ジンファンデルの適地。