ピエモンテ州

ピエモンテとは「山の足」という意味である。その言葉通り、この州はアルプスの南側にあり、春ともなれば雪解けの清流が米作地帯のノヴァーラ、ヴェルチェッリの2つの平野に水を運ぶ。スーザ渓谷の南側の急な斜面はこの州の代表的な葡萄であるネッビオーロの故郷である。ここは14世紀以来、ワイン造りに精を出してきた。ネッビオーロから造られた力強いワインはこの地方の特有の白いトリュフ、豪華なリゾット、子牛肉の煮込み、鹿のもも肉の串焼きといった地方料理に良くあったことだろう。ピエモンテは本格的な農業州である。しかし、今日ではトリーノを中心に工業も盛んで、ロンバルディーアと共にイタリアでも群を抜いて所得水準の高い州となっている。州都トリーノはかつてはサヴォイア王国の首都として統一イタリア王国形成の中心であったし、今もイタリア諸都市の中で最も美しい市街地を誇っている。 ワインは州の中部から東南部で多く生産されている。コryテーゼ・ディ・ガーヴィCortese di Gavi が造られる。中部の南よりではイタリアの代表的な赤ワイン、バローロ Barolo トバルバレスコ Barbaresco が造られ、その周辺の広大な地域では熱くていかにもイタリアのワインらしい風味の各種のバルベーラ Barbera が多量に生産されている。 北のノヴァーラ近くで生産されるガッティナーラGattinara 、ゲンメ Ghemme 、シッツァーノ Sizzano などの赤ワインはバローロやバルバレスコと同じネッビオーロ種の葡萄から造られるが風味はやや異なり、酸味はやや少な目であるが、心地よい渋みと苦みが口内に広がる素晴らしいワインである。 「王者」バローロについては語り伝えられていることも多い。例えば、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)がこのワインを大量にローマに持ち帰ったとか、ローマ法王パウロ3世はこのワインを試飲した後で、300樽をフランス国王アンリー2世に送ったが、国王はこれを「満足すべき最良のワイン」と讃えたとか、バローロの弟分とも言えるバルバレスコはたくましいが同時にデリケートなワインでもある。イギリス人の中にもバローロよりバルバレスコの方が親しみやすいと言う人もいる。十字軍の時代にバルベリーア(北アフリカ)から輸入されたというバルベーラは、今日では種類も多いが「庶民の血筋」を引くワインといわれてきた。19世紀の詩人ジョスエ・カルドゥッチ(1835〜1907)は「美しい酒、バルベーラ、飲むほどに、嵐に立ち向かい、海に一人さまよう思い」と詠っている。ピエモンテのワインは生産は最近の平均で33万kl、うち、D.O.C.G.及びD.O.C.ワインが1/4を占めている。タイプ別では赤ワインの比率が多くて全体の3/5である。現在、D.O.C.G.及びD.O.C.ワインは 42とイタリア20州中最も多い。 V.d.T.の大部分は赤ワインであり、中でもバルベーラ種の葡萄を原料とするものが多い。また、ロゼのロザート・デッラ・セッラ Rosato della Serra と白ワインのヴェルベスコ Verbesco も有名である。このうちヴェルベスコはトスカーナ州のガレストロに抵抗して造られた爽やかな軽いワインで人気がある。また、V.d.T.ながら敏な井発酵によるスプマンテの評価も高い。 州はアレッサンドリア、アスティ、クーネオ、ノヴァーラ、トリーノ及びヴェルチェッリの6県からなり、その全てのワインを産出する。