間 酒
古く新酒(秋彼岸の頃よりつくり始める)寒前酒(寒の前につくる酒)との問に造る酒の意に用いられた(『日本山海名産図会』)。当時は一年中酒を造っていたから、その季節によってそれぞれ名称があったのである。この言葉もその一例である.いまではもっと広い意味で古酒と新酒との間に出る酒という意味で用いられ、さらに転じて新酒と古酒とをまぜた酒−合酒−という意味に用いられる。

アイリッシユ・ウイスキー
アイルランド産のウイスキーのことで、イギリスに属する北アイルランド州とエール自由国(アイリッシュ自由国)で製造されるウイスキーをいう。このウイスキーの製造については、それぞれの地域で特別の法律(定義その他)があり、それに基づいて製造することになっている。アイリッシュ・ウイスキlはスコッチ・ウイスキーと並んでイギリスの世界に誇る特産物であり、日本ではスコッチの方が広く名が通っているようだが、ァィリッシュもその品質において優るとも決して劣ってはいない。なお、アメリカの法律上の親格ではスコッチウイスキーをWhiskyと書き、アイリッシチウイスキーをWhiskeyと書いて区別している。【歴史】「すべての酒のうちで、ァィリッシュの酒が最高である」とは有名な大ロシアのピークー大帝の言葉だと伝えられているが、アイルランドの人々は常にそのことを信じている.ウイスキーの製造は1000年以上前であるといわれているが、ゲール人(アイルランドの原住民)の間に生命の水unisque-beata(uisee baugh)Water of lifeという語があり、これはWhiskeyを意味している。このことから彼らはウイスキーをつくることを知っていたことが推測できる。一般に発酵した酒を蒸留する技術は中国人が持っていたようで、またペルシア人やアラブ人は香料を蒸留することを知っていたようである。アリストテレス(BC500)はその著書の中で蒸留について記述しており、地中海沿岸では蒸留はよく知られていたようである。しかしその知識がどのようにして、何時、アイルランドヘ伝えられたかははっきりしていない。アイルランドの伝説では、1500年以前にその島へ渡ったセント・パトリックが蒸留の技術をアイルランド人に教えたということになっている。ヘソリー二世の時代、即ち800年前には穀類からスピリット(酒精飲料)を製造することを住民が知っていたことは確かである・当時の酒が自国産の穀類から造られ、今日のウイスキーと良く似 たものであったことは間違いない。このようにしてウイスキー製造はアイルランドにおいて数百年間実際に行なわれたの である。今日世界にはアイリッシュとスコッチと二つの権威あるウイスキーが存在するが、ウイスキーの発生地はアイル ランドで、それがスコットランドヘ伝承されたものと考えて 誤りではないようだ。人々はその国でとれる農産物を原料として、いろいろのタイプの酒を造る。ぶどうのとれる土地にぶどう酒や、その蒸留酒であるブランデーが生れる。アイルランドにおける大麦の栽培は西ヨーロッパでも古く、この大 麦からアルコールの強いビールと蒸留した酒、ウイスキーを造ったのである。【製法】アイリッシュもスコッチもともに定められた規制に従って造られる。アイリッシュの原料は大麦で、アイルランドの多湿な気候の中で栽培され、最高の品質のものが選ばれる。この大麦を水で浸し、発芽させて麦芽をつくる工程は両者とも同じだが、発芽の後、アイリッシュは麦芽を石炭で乾燥させるだけで、スコッチは麦芽をピート(泥炭)の煙で焙焼するのである。この生麦芽の処理の相違が二つのウイスキーの香りの大きな相異となって表われてくる。アイリッシュにはスコッチにある煙臭い匂いがないのである。次にスコッチはこの麦芽に水を加えて(もろみという)発酵させるのに対して、アイリッシュはもろみにおいて25〜50%の麦芽と50〜75%の未発芽の穀類(大麦、燕麦、小麦、場合によっては少量のライ麦)とを混合して発酵させる。発酵の工程は両者共余り変りはない。蒸留はいずれもポット・スチルを用いるが、アイリッシュは釜がスコッチより大きく、2〜3万ガロン(約76〜114kl)位の容量である。蒸留によって得る酒は普通86%のアルコール分(オーバー・ブルーフ50度、アメリカン・ブルーフ172度)をもっており、スコッチの70%より高いのが特長である。もちろん蒸留液の中間の部分(中留区分)を集め、初め(初留)と後(後留)の区分は改めて再留する。そしてアイリッシュは3回蒸留をくり返すのが普通で、スコッチは2回である。アイリッシュの蒸留はかなり繁雑なのが特長である。こうして得られた蒸留液は、以前にブランデーを容れた樽と普通の樽の両方に貯蔵され熟成させる。この熟成の問に酒は木質部から色を受け、香りを与えられ、さらに微妙で緩慢な物理的化学的変化を受けて、まるい香味をもってくる。定められた最低の貯蔵期間はアイルランド国内用は5年であるが、業者は多くの場合10年から12年の調熱を行なっている。このように貯蔵したウイスキーは瓶詰して出荷されるが、その前に必ず何十個かの樽のものを適当に混和して調合を行ない、これを水でうすめて40%内外にする。ここで始めてアイリッシュ・ウイスキーが商品となる。なおプレンデイッド・アイリッシュ・ウイスキーと称するアイリッシュがあるが、これは先刻のポット・スチルと、もう少し精巧なパテント・スチルのウイスキーを混和したもので、香味もずっとうすくなるが、一方ソフトな型になる。しかし、これは少数であって、大多数は100%ポット・スチルのものを商品としている。これがアイリッシュのストレート・ウイスキーと言われる所以で、スコッチはほとんどプレンデイッド・ウイスキーで、ポット・スチルとパテント・スチルとを混ぜている。【市場】イギリスでもアイリッシュは随分と飲まれてはいるが、スコッチの宣伝と積極的な量産政策におされがちで、量的にも下まわっている。アメリカはアイリッシュの最大の顧客であって、最近ではイギリスよりも多量に飲まれている。もちろん業者と政府との共同によるアイリッシュの宣伝が着々と効を奏した結果である。そして業者は特にアイリッシュの古さと毛並の良さを、歴史の新しいアメリカに対する宣伝の種としている。                              

アウスレーゼ
ぶどう果の摘みとり方で「房選り」のこと。また、そのぶどうで造ったワインをも指す。ラインガウやモーゼルの畑ではぶどうをいつ採取したのか、どこまで選んだのか、つまり「房選り」か「粒選り」かでクラスが定まり、レッテルに表示する。広い畑からよく熟した房を摘んで酒にしたのがシュペートレーゼ(おそ摘み)。アウスレーゼとは本来「選ぶ」という意味で、冷害を受けたり、傷ついたりした不良の房を除き、十分に熟した良い房だけをさらに選んで摘んで酒にしたもの。まさに「房選り」のことである。この場合、砂糖は全く加えない完全な生ぶどう酒(ナチュラル・ワイン) であることが条件である。濃く深味があり、ほど良い甘さのワインで食後酒(デザート・ワイン)の花である。ただし、毎年どこの畑でも造れるという酒ではない。さらに、天高く澄みわたる晩秋までぶどうを木に残しておくと、ボトリティス菌という微生物が繁殖、ぶどう果は腐熟してくる。これが貴腐粒であって、このような粒のみを選んで搾ると糖の濃いアルコール豊かな高貴なワインがとれる。これがべ−レンアウスレーゼである。このワインはドイツでもライン地区の指導的な醸造家によって造られ、その年では最高のもの、もちろん、利益などは度外視されたものである。かなり甘口であるがくどくはなく、香り高き美酒である。食前、あるいは食後に供される、世界の白ワインで最も注目すべき貴重な酒である。さらに天候に全てをかけてぶどうを木に残しておくと、木についたまま、果粒は遂に干ぶどうになる。これを一粒ずつピンセットで摘んで酒にしたのがトロッケンベーレンアウスレーゼ(腐熟乾粒酒)である。この方法では一人で一日摘んでもやっと一本分がとれる程度、しかも晴天が続かねばならず、全く運を天に任せた醸造法であり、毎年誰でもが造れるという物ではない。天が与えた偶然が、高貴な美しい黄金色の酒、奥深い濃醇さをもった甘味、そうした貴い酒を造り出すのである。

赤 酒 あかざけ
九州熊本地方の特産、一名肥後の赤酒ともいわれ、赤褐色を呈することからこの名が生れた。また製造中に灰を使うことから灰持酒の名がある。味は甘く渡厚でみりんと清酒の問のような酒である。鹿児島・宮崎地方で地酒といわれているものも同じである。現在は主に調味料として、また新春の屠蘇に用いる。【歴史】この歴史は明らかでないが、伝説によると豊臣秀吉の朝鮮遠征の折、加藤清正がその製法を持ち帰り熊本において製造したのが始めであるという。赤酒とよく似たもので出雲に地伝酒というものがあり、 尼子の遺臣が発明して伝えたというが出雲は昔から朝鮮から漂流する老が多い土地で、地伝酒もこの漂流民から伝授されたとも考えられるという。この他、日本海に面する所に似たような酒が伝わっており、九州地方もまた朝鮮とは古く交流のあったところから赤酒の製法が伝わったとの説をなすものが多い。しかし、朝鮮にはこのような酒は今も昔もないので、これも伝説にすぎないとする説もある(住江金之『酒』)。赤酒は古くは直接飲んでいたようで宝暦年問(1751年頃)肥後の太守細川重賢は勤倹を奨励し、酒は濁酒と赤酒以外の飲用を禁止した。その為赤酒の製法は大いに進歩したという。この禁令のため明治の始めまで赤酒は肥後の国民酒であったが、維新となって禁令が解けると、酒飲みはみな濃厚で甘過ぎる赤酒をやめて、淡白で芳醇な清酒−火持酒(灰持酒に対していう)に走ってしまい、赤酒の醸造高は激減した。明治の始めは三万石をこえたが、その後四万五千石になってしまった。【製造法】赤酒の製法は簡単払いえば、清酒もろみをつくりこの搾る直前に特種の灰(アク)を投入し、清酒のように火入を行なわない酒である。灰を入れるので、赤酒は酸性でなく中性もしくは微アルカリ性である。また、この造り方は日本古釆の醸法とよく似ているという。赤酒は本来九月から翌年五月までの問に造るもので、比較的温暖な時期であるから昔は製造中酸っぱくなる酸敗、特に甘酸っばくなる甘酸敗がおきやすい。この甘味の強い酒をして酸っばくない酒を考えて、赤漕が生れた。つまりできるだけ濃目に仕込んで、酸の方は灰で中和するという合理的なやり方である。工程は清酒と大同小異、原料米は粗白米で約90%である。これを普通のように処理して麹、蒸米を造り、速報醗を造る。酵も常法で三段仕込であるが、やや高温で経過する。ただし仕込に用いる水の量−汲水量−は総米の約57%(普通清酒が120〜130%)であるから、相当に濃厚であるのと、麹の使用量が31%(普通清酒は23%)と多いのが変っている.経過は20日間放置して灰を加え、搾りあげる短期間のものと(新夏)、約100日間放置してその間何回か灰を加えるという長期のもの(本夏)とがある。途中焼酎を加えたり−柱焼酎−珍しいことに、明治の末期から麦芽を一部加えて甘味をつけるという和洋折衷の造り方(新夏)をすることもあった。搾ったものは、十分静置して透明にする。【灰の効用】灰は主に欅、椿、柳、茶、梅等の木の灰で、七種の灰を混ぜるというが、その混ぜ方は秘法であって分からない。この灰は強いアルカリ性であって、これを加えることによって酸ほ中和されてしまう。赤酒は特別に火入殺菌も防腐剤も入れていないが、製造中でも貯蔵中でも酸味が多くなれば灰を入れるので永持ちするのであるという。灰を入れて火持ちをよくした(貯蔵性をました)酒であるから灰持酒といわれ、これに対して(火)熱を加えて殺菌して持ちをよくしたのが火持酒すなわち普通の清酒である。もう一つの効果は灰のもっている吸着カで何かと成分をとってしまうこと、そしてひいてはこれが清く澄む原因になるともいわれる。灰という不思議な品を製造に使った、しかもかなり多量に、随時加えるというやり方は、まことに興味深い。【製品としての赤酒】赤酒は濃褐色、非常に甘い酒で、独特の風味がある。赤酒は普通比重1.04〜1.09、アルコール分10〜16%、エキス分30〜48度(うち糖分25〜45%)、PH 6.8〜7.0、中性もしくは微アルカリ性の世界でも珍しい酒である。主に調味料としてまた正月の屠蘇に用いられ、最近は東京・関西にもしられるようになった。我が国には料理用の酒としては他にみりんがあるが、これは酸 性であって普通の酒類のタイブである。ところが赤酒は中性あるいはアルカリ性であっで、このような型の酒は、料理用としても飲用としても世界に例はない。まことに珍しい酒である。一体この微アルカリ性が料理用としてどんな効果を持っているのか明らかではないが、おそらく酸性に属する料理の材料を、ある程度中和して味をまろやかにする効果があるのではなかろうか。またみりんよりも甘味が少なく、適当な甘さであることも調理を効果的にするのではなかろうか。何れ忙しても珍しいアルカリ性の酒である。

アクアビット
スカンジナビアで造られる一種の蒸留酒。穀類、あるいは馬鈴薯を原料として造られた蒸留酒は、一旦よく精製され、それから芳香ある種実や香味料、特にういきょうの実を加えて香りをつけたものである。アクアビットは一名シュナップスとも呼ばれ、有名なスカンジナビア料理の前菜(約50種類もあるという)と共に冷やして飲むのが青からの習慣である。そもそもこのアクアビット、ラテン語で生命の水を意味するAqua vitae を縮めた語であり、13世紀、イタリアでぶどう酒から造った最初の酒の名前と一致している。ストックホルムにおいて最初にこのアクアビットの販売を許されたのは1498年。この当時はワインを蒸留して造ったのであるが、必要なぶどう果はスウェーデンではとれないので、海外から輸入したため大変高価であったという。やがて穀類から製造する技術を覚え、最も安価な馬鈴薯からつくることになったのは18世紀になってからである。現在スウェーデンには、約20のアクアビットの工場があり、O.P.Anderson がよくしられている。これはキャラウニーの種、アニスやういきょうの実で匂いをつけているもの。またデンマークではシュナップスと呼ばれて国民に愛好されている。

アクアビティー
ラテン語からそのまま訳せば生命の水であるが、蒸留酒つまりアルコールやウイスキー、ブランデーを意味する古語。

灰持洒 あくもちしゅ
赤酒の別名。

アスティ
南の太陽の輝くイタリアはぶどう酒の産地である。エドモンド州のアスティはそのなかでも名高い生産地である。この辺はあのマスカット・ダスティの産地。アスティ・スプマンテはこれで造った甘口の発泡性ぶどう酒でフランス産に劣らないもの。またアスティには甘口のイタリアンベルモットも多い。

アスペルギルス
これに属するものに清酒に用いられる麹かびがあり、その他日本で醸造に用いられているものが多い。全体で約1000種が発見されて記載にあがっている。東洋はかびの国といわれ、かび類がもっている澱粉を糖化するカ、蛋白質を分解するカを利用し、清酒を始めとし、いろいろな飲食品を造っている。ところが欧米では、かびを飲食品に使うことは少なく、酒類の製造には麦芽という高等植物の発芽したものを用い、澱粉の糖化、蛋白質の分解を行なわせる。このような相違が何に原因しているのか明らかではないが、たしかに東洋は多湿でかびの生育に適しており、絶えずかびが人々の日常にも目にふれるところから、このような利用が始まったのであろう。欧米はどちらかというと乾燥型の風土、かびもはえ難い土地柄。こんなところにそこに住みついた人々の知恵が働く。ただ同じ東洋でも日本と中国はかびの種類が異なっている。日本ではアスペルギルスが主であるが、中国はムコール(毛かび)やリゾプス(くものすかび)が主である。

圧搾汁 あっさくじゅう
果実酒をつくる時、果粒は普通、潰した後、圧搾機によって搾られ、かすの部分と液に分けられる。この液体が圧搾汁、また搾汁ともいう。

アップル・ジャック
アップル・ブランデーをアメリカではこのように呼ぶ。しかしこの語は二つの意味をもっているという。一つは本来のりんご酒を蒸留して得た酒であり、もう一つは凍結法によるもの。即ちりんご酒を凍らせると、先ず水が凍るからこれを除くと、凍らずに残る液の部分は純粋のアルコールである。この度数の強い、かすかに油に似てとろりとした部分もアップル・ジャックという。この方法はもちろん今日ごく稀に未開地でみられる方法で、一般的ではない。アップル・ジャックの歴史はアメリカの開拓史そのものである。古く最初の移住者がくるまでは、この大陸にはりんごがなかったから、りんご酒もそのブランデーもない。イギリス人とオランダ人はビールを持込み、イギリス人はニューイングランドでホップと大麦の栽培を始めたが旨く行かなかった。同時に果樹を移植したが、この木は繁殖し、本国より早く実った。ニューイングランドでは結局ホップの栽培が旨くゆかなかったことから、ビールの嗜好はりんご酒や、西インドからのラム、そしてりんごのブランデーヘと移ったのである。その後いろいろの酒が新大陸で造られはしたが、長い間、村落地帯では最も一般的な酒はこのアップル・ジャックだった。また取引をするにしても交通の不便な時代、重い果物や穀類を運ぶよりは、酒、なかでもアルコール分の高いアップル・ジャックを運ぶ方がより経済的であるはずだ。なお面白いことに開拓期時代のアメリカ人が固く信じていたことは、強い酒が健康には必要なのだ、ということである。アップル・ジャックが人々の間に飲まれた理由もこの辺にあるのかもしれない。アップル・ジャックの原料りんご酒は、健全で堅く、良く熟したりんごから造られる。そしてその酒は蒸留される。蒸留装置はかつては簡単な単式蒸留機を用いたが、現在では二回蒸留を行なうのが普通で、最初は60プルーフ、2回目は110ブルーフから130ブルーフにする。今日ではこれに穀類からの中性アルコールを加えて85〜100ブルーフ (42〜50%)にし、オークの樽に1ないし5年貯蔵熟成して商品としている。なおりんご酒発酵前の搾り粕(ポメース)を発酵させ、これを蒸留したいわゆる粘ブランデータイプのものもある。

アップル・ブランデー
りんご酒を蒸留してつくった蒸留酒。オー・ド・ヴィー・ド・シードルともいう。フランスで最高のアップル・ブランデーはカルバドスとよはれ、またアメリカではアップル・ジャックとよんでいる。

アニゼット
アニス(セリ科の植物)の実を浸清して造ったリキュール。アニスの種子アニシードを主体とし、これといろいろな香料をアルコールで浸出し、この浸出液を蒸留する。水を加えてもう一度蒸留し、これにシロップや香料を加えて造ったリキュール。色は無色であるが、多少ピンク色のものもある。アルコール分35〜40%。アニス特有の香りがあり、水で割って食前酒(アペリティフ)として用いられる。アブサンが禁止されたので、その代りにフランスやイタリアなどでよく飲まれる。

アブサン
にがよもぎを主として香をつけた線黄色のリキュール。特殊な香りと苦味がある。香料はにがよもぎの他10種類近くをまぜ、ブランデーを加え、これを蒸留してつくったもの。アルコール分約68%、水を加えると白濁する。これは含有する精油分が低いアルコール濃度で析出するためである。最初は解熱剤として用いられたが、今ではこれを飲用すると中毒症状を呈するので、禁止されている。

アプリコツト・ブランデー
あんずを発酵させ、この液を蒸留して得る果実の蒸留酒。ハンガリーに多く、バラック・パリンカ ケチケメト(ブダペストの東南約80キロ) の果樹園からきた新鮮なあんずを原料にしたものである。アルコール分約40%。

アぺラシオン・コントローレ
アペラシオン・ドリジヌ・コントロ−レ原産地呼称統制法(略してA.C)。フランスで行なわれている特殊なワインやブランデーがその原産地を名乗ること、併せてぶどうの品種、製造法等についての統制のことである。フランスは昔からぶどう酒の品質を保証し維持向上をはかるため、国が自らいろいろな統制を行なっていた。19世紀の中頃、すでにぶどう園の保護法が設定され、その後いろいろの経過があって、現行の原産地呼称法が制定された。この法律の施行と監督のためフランスでは国立原産地呼称研究機関がパリに設けられ、また地方には常駐の監督官が配置されている。もちろんこの法律で指定を受けていないものは、原産地を名乗れないのであり、登録を受けている業者は以下に示すような厳重な規制を受け、製品はたえず審査を受けて一定のランクに格付けされ、それぞれ呼称が指定される。なお全く新しい土地で、すぐれたワインができたときは、一定の審査に合格した後に特殊上等酒V.D.Q.Sの証紙を粘って出荷することが認められている。この法律は(1)川原産地の範囲を規定し、土壌の地質学的構成がぶどう酒の醸造に適している部分に限り、この制限された地域内にあるぶどう園だけがその地域の名称を用いることが許されている。(2)似使用するぶどう果の品種。この選択は各地帯の最高の伝統的な実情に従う。(3)ぶどう酒の最低アルコール含有量を規定する。ぶどう酒のアルコール分は、その酒の貯蔵性に関係している。もしぶどうが出き過ぎるとぶどうの糖分は少なくなり、ひいてはぶどう酒のアルコール分も少なくなる。従って何も加えていないぶどう酒の最低のアルコール分の大切な要件である。(4)栽培上の方法。刈込、肥料、その他ぶどう樹の一般的な取扱いは、ぶどう酒の品質に大きな影響をもっている。従って栽培上の方法も規制されている。刈込の型はそれぞれの地帯に特有のもので、またぶどうの収穫が多過ぎて特長のない果実ができることを厳重に規制している。(5)許容される収穫量。品質は収量とはむしろ反比例するので、品質保持のため収穫の許容量が定められている。それはヘクタール当りのヘクトリッター数で表わされる。(6)醸造法。すぐれたぶどう酒の声価をまもるため、各地区の伝統的なぶどう酒の製造法は、十分まもらなければならない。特にぶどう酒のはっきりした特長をつかむことが大切で、この識別を教育するため利酒の競技会もたびたび行なわれる。(7)蒸留について。フランス払おける蒸留酒も統制を受けている。この種の酒の名声を博したためのいろいろの処理は、法律に体系化されている。このようにこの統制法は、ぶどう酒業者及びぶどう酒自体を、厳重に規制しているが、このことがフランスのぶどう酒の消えることのない名声を伝えさせている原因の一つであろう。

アぺリティフ
食前酒のこと。この語は食欲増進剤として食前に飲むいろいろな酒を指す。フランスではワインをもとにしたものと、蒸留酒をもとにしたものとの二つを区別している。一般にアルコール分が余り高くなく、味も余りに甘過ぎるのは食前酒にはむかない。軽くて味はまるく、場合によって適当な刺激−苦味などがあってもよい。一般にシェリー、シヤンパン、白ぶどう酒が用いられ、その他ベルモットつまりワインに蒸留酒を添加してアルコールを強めたもの、あるいは特に匂いをつけたものも用いられる。例えばデュボネは白ぶどう酒にキニーネまりキニンを浸したもの。一種の強壮剤的なアペリティフであり、Lilletはソーテルヌ地区の自ぶどう酒をコニャックで強めたものだがその製法は秘密である。ビールはキニンやキナ皮などを加えた浪色の辛くてやや苦いぶどう酒である。セント・ラフアユルはフランスで貴ばれ、世界的にもしられており、ブランデーで強めた赤ぶどう酒とキニンをもとにした鉄柵で赤味をおびてほろ苦く甘い酒である。この他にカクテールもアペリティフとして用いられる。だが最高のアペリティフは、シャンパン、辛口のシェリーとを原料忙した辛口のマデイラであるというのが常識である。

甘口酒 あまくちしゅ
甘味の多い酒のこと。酒類にはほとんど糖分を含まないウイスキーやブランデー、焼酎もあるが、普通多くの酒類は糖分を保有している。どの位の糖分からが甘口酒であるかということは明示することは難しいが、清酒ではマイナス3位が甘口でワインは、糖分7%前後からであろう。もっとも比較上の意味に使われ、例えば「白は赤より甘口である」という用法もある。

甘 酒 あまざけ
醴、米麹と飯とを等量まぜ、約一昼夜55℃前後に放置すると甘酒となる。一名一夜酒ともいう。これは米麹のもっている糖化酵素が働いて飯の澱粉を糖化し、甘くする。その原料配合はさまざまで、前記の米麹と飯が等量まぜるのは「かた造り」。また、米麹と飯の全量の1/2〜等量の湯を加えて造れば「うす造り」。「早造り」は米麹と等量か、倍量の湯を加え飯を加えない造りである。「うす造り」で約5〜6時問、「早造り」で約四時間の糖化時間は必要で、この際温度を55℃〜60℃付近に保つことがコツである。糖化が終わったら90℃以上に温度をあげて殺菌しておく。飲むときは甘味に応じて適当に湯でうすめ、また少量の食塩、しょうがを加えると甘味が引き立つ。甘酒の成分はその造り方でさまざまであるが、一例をあげると、糖分=22.7、蛋白質=2.4、灰分=0.6、ビタミンB1、、B2などである。

天野酒 あまのさけ
河内国(現在の大阪府)天野で造られた酒のこと。室町時代に天野山金剛寺が清酒を造っており、これがまた名酒として天下に聞こえ、河内国の領主は天野酒を毎年幕府に献上したという。その後も永く天野酒は名酒の伝統を保ち、後に豊臣秀吉は朱印状を天野山金剛寺に下して良酒の醸造に専念すべく命じている。河内国は金剛寺以外にも清酒の醸造が盛んであり、天野酒はその代表的名称であったが、また 「河内酒」 の名も残っている。

アミルアルコール
酒類の香気成分の一つ。高級多価アルコールで、これにはインアミルアルコールと活性アミルアルコール等の異性体がある。その成因は醸造工程中蛋白質が微生物によって分解されてできるものとされている。それぞれの酒が特有の香りをもっている要因は、このアミルアルコールの含量が酒によって違うのと、これとプチルアルコールとの含有比が異なるためであるといわれている。

 あめ
澱粉んだ原料に温水を加え、有機酸あるいは麦芽、あるいは糖化酵素剤を添加してある程度糖化させてこの液を濃縮したもの。普通は、水飴といって粘欄な液状であるが、粉状にしたのもある。現在ほとんどは有機酸か酵素剤を用いたものが主で、麦芽の飴はきわめて少ない。水飴はかすかな甘味(ぶどう糖のように澱粉を完全に糖化していないから)をもった粘稠な半液体であって、酒類の原料特に甘味料として日本酒や合成清酒、その他混和酒の醸造に用いられる。

アメリカン・ウイスキー
アメリカ産のウイスキー。Whiskeyを綴るのはこのアメリカン・ウイスキーとアイリッシュ・ウイスキーである。【沿革】新しい大陸であるアメリカには固有の酒はなかったが、開拓者達は彼等のたくましさと国土の粗々しさにふさわしい酒を望んでいた。北部の清教徒や南部の.ハージニアの紳士の飲み物はビールとぶどう酒、ラムとアップル・ジャックであった。やがてペンシルバニア辺を始まりとしてスコットランドやアイルランドからの移住民によってその土地でとれる麦、とうもろこしを原料にしてウイスキーの蒸留が行なわれるに至る。道路の不良からくる交通の不便さは、農民が自分の手で余った作物を処理することになり、その手段の一つとして農家の行なう蒸留は次第に農村の間に広まっていった。ラムの製造業者達がウイスキーの駆逐を試みたようなこともあったにも拘らず、農民の間ではラムにかわってウイスキーが飲まれるようになった。国土の開拓の父ともいうべき人は、ほとんど農民であると同時に蒸留業者でもあったのである。例えばジョージ・ワシントン、トマス・ジェファーソンも彼等の仲間であった。有名な騒ぎは18世紀末、時の政府がウイスキーに過大な税金をかけようとしたときの 「ウイスキー反乱」である。つまり政府のこの処置に対して、ペンシルバニアの農民達は武装蜂起して抗議したのであった。その結果、南北戦争開戦までこの種の蒸留酒は無税となったのである。この後農村におけるウイスキーの製造は盛んになり、ペンシルバニアの他に、ケンタッキー、インデイアナ、南のイリノイ、メリーランドが盛んになった。これらの地帯は特に石灰岩地帯であって、この地帯の水が純粋で透明で、有機物をほとんど含まず石灰の硫酸塩と炭酸塩に富んでおり、蒸留酒用の水としては適していることも有利であった。現在でもアメリカで免許を得た蒸留業者の約8割はこの5つの地帯に集まっている。こぅして開拓地のアメリカにウイスキーは定着し、やがて20世紀になってから法律は整備され、酒税も上がってきた。1920年の禁酒法制定等の問題はあったが、解除後もウイスキーの蒸留は盛んになり、近年は年々1億ガロン(米)程度が生産され、これと同量位が貯蔵庫から引取られ、消費されている。【製造法】一般にアメリカン・ウイスキーは麦芽を用いて、とうもろこしやライ麦等の発芽させてない穀類を糖化させ発酵させるのが特長で、また蒸留は連続式蒸留横でかなりアルコール度数の高い酒をとっていること、これらの特長がスコッチと大きく異なる点である。まず、とうもろこしやライ麦は水を加えて蒸煮されるが、この時加える水の幾分かは前の酵の残りと、蒸留廃液を加えることがある。いわゆるサワー・マッシュといわれるもので、製品の香味を増強するためである。蒸煮の終ったもろみは冷却し、麦芽を加えて糖化し、次に酵母を加えて数日間発酵させる。発酵の終わったもろみは、一本の連続式蒸留塔へ導かれ、蒸留される。得られるウイスキーのアルコール濃度は、アメリカの法律で190ブルーフ以下(95容量%)と規定されているが、ここまで行くと全く原料の穀類からくる特性−香りや味−を失ってしまい、中性のスピリットになってしまう。そこで多くの場合140〜160ブルーフ位のものを採取する。蒸留後加水をして樫の樽(オハイオ産)に貯蔵、色や香味を十分つけた後(最低2年以上)さらに加水して80〜100ブルーフとして瓶詰する。(1)バーボン・ウイスキー=ケンクッキーのバーボンが中心地。とうもろこしを少なくとも51%含んだもろみを造り、蒸留は160ブルーフ以下で行なう。そして新しい内部を焦がした樫の樽に最低4年間貯蔵熟成させたものである。なおサワー・マッシュを用いることになっている。同型のバーボンのみを調合したものが特にストレート・バーボン・ウイスキーと呼ばれ、ストレートが50%以上で他の中性アルコール等を混じたものがプレンデイッド・バーボン・ウイスキーである。他に最低4間貯蔵した同一蒸留業者の同一工場で同じ季節か同じ年内に造ったストレート同士を調合し、100ブルーフでびん話したものがボトルド・イン・ボントである。この際貯蔵は政府の管理する倉庫で貯蔵熟成させる。(2)コーン・ウイスキー=バーボンと異なってとぅもろこしが80%以上。貯蔵熟成は再使用の内部を焦した樽、あるいは焦していない新樽を用いる。(3)ライ・ウイスキー=ライ麦を最低51%使ったもの。蒸留や熟成はバーボンと同じである。ストレート:フレンデイッドともにある。(4)ホイート・ウイスキー=小麦を最低51%。(5)モルト・ウイスキー=大麦麦芽が最低51%使われたもの。(6)ライ・モルト・ウイスキー=ライ麦の麦芽最低51%使われたもの。このように他の原料は何であっても51%を占めている原料の名をとって呼ぶことになっている。ただしコーンは80%。【分類】現在アメリカの法律によるとウイスキーとはまず穀類を原料とした蒸留酒であって、その原料からバーボン・ウイスキー、コーン・ウイスキー、ライ・ウイスキー、ホイート・ウイスキー、モルト・ウイスキー、ライ・モルト・ウイスキー、に分類されている。また調合のいかん、つまり同型のウイスキーのみを調合したストレート・ウイスキー・、各種類のものをまぜたプレンデイッド・ウイスキーに分類、他にボトル・イン・ボンドがある。 【性質】一般にアメリカン・ウイスキーはスコッチやアイリッシュに比較して軽快で、香気や味もまる味をおび、ソフトなウイスキーで、飲みやすい型である。なかでバーボンは樽の関係で色が濃く、樽からの匂いが強い。しかし蒸留撥がスコッチやアイリッシュと異なってすべて連続式蒸留塔で、ある程度の不純物が分離されるという所に、アメリカン・ウイスキーの特長がある。

アメリカン・ブルーフ
アメリカにおけるアルコール含有量の表示の方式である。

アメリカン・ワイン
世界で第6位のワイン生産国、アメリカはその広大な地域のなかに、大きく分けて二つのワイン生産圏がある。一つはカリフォルニア州であって、ここでこの国の生産するワインの約90%が造られるが、他はいわゆる東部といわれる地帯で、ニューヨーク州を主として隣接の諸州がここに含まれている。普通アメリカン・ワインといえば、アメリカに本来あったぶどうを原料としたもので、東部のワインを指し、ヨーロッパ系の種をいれたカリフォルニアと区別する。しかしこれと逆にカリフォルニアがその生産量その他でアメリカの代表ということで、アメリカン・ワインといえばカリフォルニアのワインとする人もいる。ここでは前者に従ってカリフォルニア・ワイン以外のアメリカのワイン、主として東部のものをアメリカン・ワインとして説明したい。現在ではアメリカン・ワインといっても、その原料はアメリカ系本来のものはかりでなく、欧州糸との交配種も用いられ、また欧州系のぶどうがカリフォルニア以外のオレゴン、ワシントン、アリゾナ等で栽培されている現状である。従ってここでいうアメリカン・ワインの生産地帯はいわゆる東部のニューヨーク、オハイオ、ニュージャージー、バージニア、ミズリーとミシガン、メリエフンドである。またアーカンソー、ジョージア、イリノイにも、少ないがぶどう酒がみられる。【ぶどう品種】この地方の古くからある品種はマスカデインで全く野生のもの、これはヴィティス・ロトンデイフォリアに属する。この他にラブルスカ種および交配種がある。ラブルスカでよくしられているものは、赤用にコンコード、キャムベル・アーリアジロンダック」(交配種)、ハートフォードなどがあり、白用にはナイアガラ、カトウバ、デラウェア(交配種)などがある。これらのぶどうは独特の狐臭があって、ワイン用としては良質のものではないが、湿気の多い所にもよく育ち、普通酒の原料として用いられる。【生産地帯】(1)ニューヨーク=この州は発泡性ワインの最大の生産地である。この中でハドソン河谷はニューヨーク市から約70マイル北のニューパークから始まっている。コンコードを主体にして造られ、いわゆるコーシヤー・ワインの産地である。(ユダヤ人の宗教の教義に従ってそのサービスに用いられる酒。儀式とか祭りに飲むワイン。砂糖を加えて甘くしてある。多量に売られているワインである)。フィインガー・レークスはこの州の中央。この荒い気侯が水によって和げられ、ぶどうの栽培を盛んにしている。発泡性ワインが多い。カトウバ、デラウェア、ユルビラ、イサベラ種のぶどうが用いられる。その他バッファーの南にあるシャトウケア潮の周辺がコンコード種のワインを造っているし、オンクリオ湖とユリー湖の内にあるナイアガラはテーブル・ワインが造られる。(1)オハイオ=ユリー湖に沿った地帯がぶどう酒の産地である。サンダスキーがその中心地。カトウバ種が古くからある品種、赤・白の非発泡性ワインが多い。この州のワインはカリフォルニアのものと調合されるが、これは増量の他に狐臭が低くなるという。この州のデラウェアは同名のぶどうの原産地として有名である。(3)メリーランド=この州の気侯はぶどうの栽培に適している。熱心な人達によってフランスの品種との交配等が行なわれている。(4)ミシガン=ミシガン湖の近くこの州の南部がぷどうの地帯。コンコードが主体で、その他カトウバ、デラウェアが用いられ、辛口、甘口、発泡性が造られる。余り良いものはできない。(5)ニュージャージー=この州のワインは次第に減少している。(6)バージニア=ぶどう園は少ないが、ワインは質が良いとされている。                               

アメール・ピコン
フランス産の苦味酒で食欲増進剤に用いられる。ぶどう酒とブランデーをもとにし、苦味をつけるため、キニーネ、オレンジの皮やさまざまの薬草を加え、浸出したもの、氷と共に、また水でうすめて飲む。時に「すぐり」のシロップや「にっけい」で甘味をつけて飲む。

アモンチリヤド
スペイン産シェリーの一種でフィーノ種、色はうすくなく、香りはむしろ高い。本来辛口であるが、アングロ・サクソン用のやや甘くなったアモンチラードもある。

菖蒲洒 あやめざけ
あやめの根を細かく切りこれを酒にひたしたもの。昔からあやめは薬効があり、特に泥の少ない渓間にはえたものは薬効大で、これを酒に浸して用いるとされている。『千とせの門』に「長命のいととしきけば薬玉のあやめの酒の百薬の長」とよまれてある。

アラック
ジャバ、セイ口ン、タイ等で古くから造られている蒸留酒。ラック、ラッキともよばれ、我が国へは江戸時代、オランダ人の手で持ち込まれた。日本ではあらき酒、阿刺木酒、阿刺吉、荒木酒と呼ばれ、南蛮渡来の強い酒(焼酒)として珍重されたようで、当時の南蛮酒の代表的な酒であったようである。アラックはアルコール分60%前後、無色で香味はラムに似ている。樽に貯蔵して黄色のものもある。アラックの製造法はさまざまであるが、原料も、甘蔗(さとうきび)の糖蜜、米が混用され、またこれらにココヤシの花梗の汁、トデイを加えて発酵させたやし酒が土台になったものもある。米を利用するのに二つの違った方法がある。一つは米芽つまり米のもやしを造るやり方である。米芽は粗を浸潰して十分水を吸わせ、これを発芽させて米芽こをつくり、これに水を加えて60℃で糖化、濾して透明な液をとり、これにトデイ、糖蜜を加えて発酵させる。別法にきょく子つまり中国式の麹をつくるやり方がある。きょく子は米粉やわらの他に熱帯特産の甘蔗や香料を加えるところが南方式のきょく子の型。拍子ができたら、これと蒸した米の乾燥したものをま液を入れて発酵を行なわせ、10日〜13日間位で発酵が終る。どちらのやり方でも発酵の終ったものは、極めて簡単な蒸留横にかけて蒸留するが、普通2、3回蒸留をくりかえす。精巧な蒸留横にかけて不純物の少ないものをとることもある。

荒 走 あらばしり
清酒もろみを搾り袋に入れて圧搾するとき、最初に出てくるにごつた酒をいう。

霰 酒 あられざけ
あられを浮べた酒。古くから奈良の特産である。あられは粳米を蒸して餅とし、これからかき餅をつくり、しょうちゅうに浸して乾燥しこれをくりかえしてあられをつくる。このあられをみりんの中に浮べたもの。
 句撰やみぞれ降る夜のあられ酒 丈草
 炉びらきや雪中庵の霰酒    蕪村

亜硫酸 ありゅうさん
ぷどう酒醸造の際この種の薬剤を添加して、その防腐的効力その他の作用を利用して醸造を安全にする。亜硫酸およびその塩類はバクテリア類に対して殺菌カをもつ他、酸化に対しては還元的に、還元に対しては酸化的に働く両性の作用がある。ぶどう酒で防腐的効果を発揮する他、白ぶどう酒の酸化(褐変)を防ぎ、赤ぶどう酒の還元(退色)を防止する。世界各国ぶどう酒の醸造には用いられているが、我が国でも食品衛生法の制限(ぶどう酒中に残っている二酸化硫黄の量がぶどう酒一kgにつき0.35gをこえないこと) の下で使われている。

アルコール

化学的には炭化水素の水素原子一つまたは二つ以上を、水酸基OHで置換した化合物群.沢山の化合物はあるが、エチルアルコールは酒類等に含まれ、飲用に供せられるただ一つのアルコールでその他特に人間生活に関係が深いので、普通、アルコールといえばエチルアルコールを指す。アルコールはすべての酒類に含まれる主成分であって、酵母のような微生物が自己のもっている酵素のカで糖分をアルコールにする作用−アルコール発酵−で酒が生れてくる。

アルコール含有量
アルコール度、アルコール%、酒頼中に含まれているエチルアルコールの量をいうのであるが、この表示の仕方が国によって違っている。日本においては15℃における容量%で示すことになっている。つまり100mlに1mlのアルコールが含まれているとき、これを1%、あるいは1度とする。フランス、ベルギーが同じ表示法を用いている。ドイツは15℃における重量%で示すことになっている。つまり100g中に1gのアルコールが含まれるとき1%とする。従って容量%とは表示が違ってくる。イギリスはブルーフ・ガロンまたはブルーフ・スピリットなる表示を用いている。これは容量%で57.1%のときのアルコールを標準とし、これより下をアンダー・プルーフ、上をオーバー・プルーフとよんで表示する。温度は60°F(15.6℃)である。アメリカはブルーフを採用しているが、60°Fにおける容量%の50を100とし、以下容量%の倍量を示してブルーフ・スピリットとする。イタリア、オーストリア、ロシア、アメリカでは、60°Fにおける容量%で表示する。

アルコール強化
ぶどう酒の発酵の途中に加え、発酵をとめて甘口の酒にするため、アルコールやブランデーを加えることをいう。発酵の終りに加えることもある。これをアルコール補強ともいい、このぶどう酒を強化ぶどう酒という。我が国でもこの補強を認めてはいるが、加えた純アルコールの量が加えた後の純アルコールの量の90%以内に抑えてぶどう酒の品質の保持に努めている。

アルコール計
水の中に含まれているアルコールの容量%(100mlに含まれる純粋のエチルアルコールの容量)をはかるに用いる浮ひょう(浮きばかり)一種の比重計のこと。一般にアルコールの比重は水より軽いから、アルコールと水との混合液の比重は、アルコールの含有量に比例して一定の割合で軽くなって行く。つまりこの液の比重をしれば、アルコールの含有量つまりアルコールの濃度が分かる訳である。アルコール計はこの原理を用いたもので、アルコールと水の混合液をシリンダーにとり、浮んだときの液面との接線の目盛を液温15℃で読めば、この液のアルコール%が得られる。ただしアルコールと水以外に他のものが入っているときは直接には測れない。
                 
アルコール添加
清酒もろみの発酵の終る頃、一定量のアルコール(20%〜30%)を加え、始めはこれによってアルコール分を高め、清酒を増量することであったが、いまではこの方法によって新しい清酒のタイブができたともいえる。昔も柱焼酎といって清酒に焼酎を加える方法があった。加える割合の基準はその年々に応じて政府から指定され無制限にアルコールを加えることを防ぎ、品質の維持をはかっている。ぶどう酒でもアルコールを加える。

アルザス
フランスでは最も北によったぶどうの生産地帯。ドイツと境を接し、ラインの西岸の地域である。古くはアルザスという名で県であったが、現在はオー・ランとバー・ランの二つに分れている、比較的肥沃な土地である。アルザスのワインの歴史はローマの時代までさかのぼる。ゴール人によってロ−ヌ川の谷からラインの右岸に持ち込まれ、その後アルザスのワインはスカンジナビアやイギリスにも輪出され、名声をあげた。三十年戦争で一旦やや落ち目になったが、18世紀にはスイスやオーストリアで飲まれるようになる。1871年ドイツとフランスの戦の結果、アルザスはドイツ領となった。この間ドイツ本国のワインに対する配慮から、アルザスは安い酒を造るようなことになったが、1918年フランスに復帰するとともに、質的な向上が心掛けられた。このようにドイツとフランスとの問の争いの中にたえずまきこまれていたが、この結果としてアルザス・ワインはフランスの他のワインともタイブの異なった素略しい酒が生れている。アルザスのワインは、ほっそりしたびんにつめられて、どちらかというと温和で酸は少なく、アルコール10%内外のものが多い。白が主体で、他にロゼが少しある。優良な白をつくるための品種は、リースリングを始めとし、トラミネル、ピノ・グリー(トケイ・ダルサス)、ピノ・ブラン、マスカット、シルバネル、シヤスラーなどである。桃色あるいは特に灰色とよばれるものは、ピノ・ノワール(赤)と他の白の品種のものとをまぜ合わせて造る特長ある酒で、ピノ・ロゼとして売られている。アルザスのワインは、発酵期間が1〜3ケ月で、これが終るとすぐびん話することもあるが、良酒は1月頃樽に入れて積み重ね、1〜6ケ月置かれる。それからびん詰をするが、びん詰の早いのが特長なので、ワインは幾分炭酸ガスを含んでいる。やや若いのが特長のようだ。ラベルにはパンダルザスの次に用いたぶどうの品種名をあげてあり、リースリング、トラミネルなどは高級品に属する。また産地名が付記されていることもある。主なる産地は、北からモルスハイム、オベルナイ、ゲルトヴィラー、バル、ベルグハイム、リボヴィーレ、リクェヴィル、カイゼベルグ、アメールシュヴィール、ゲプヴィーレなどが知られている。またツヴィッケルという語がついたものはシャスラ種をベースに他のものをまぜた普通酒、ユーデルツヴィッケルは高級な品種をまぜたものを意味する。

アルジェリア
地中海に面し、東はチュニジア、西はモロッコと接しているこの国はかつてはフランスの植民地であったが、現在は独立国となっている。100年程前フランスの移民がこの土地でぶどうの栽培を始めたのがきっかけで盛んになり、現在はポルトガルにつぐ生産国で約82万kl(1971年現在)を生産し、しかもこの_以上はフランスへ送られて普通酒のべ−スとなっている。ミデイとよばれる南仏(地中海沿岸) の酒と調合される。酒の大部分テーブル・ワインは赤の食中酒であって、アルコール分11〜14%。主なるぶどうはサンソー、カリグナン、アリカンテ・ブーシエーである。一方近頃は優れたワインも生産され、特に海岸線よりやや陸に入った山の地帯に、赤とロゼのよいものが造られている。

アルゼンチナ・ワイン
南アメリカの西南、アンデス山脈でチリと接し、南東部は一部大西洋に面している。この大陸では第一のワイン生産国であり、世界でもフランス、イタリアに次ぐ量産国としてソビエトやスペインと肩を並べている。約200万klの生産量で、人口一人当りのワイン消費量はフランス、イタリアについで約87l、有数の消費国でもある。量的には沢山できるが、ほとんど自国で消費し、輸出入は少ないのも特教である。もっともこの国には他に発泡酒とベルモットがあり、これらはアメリカやヨーロッパに輸出されている。アルゼンチンの発泡性ワインは、二次発酵をびんの中で行なうというシャンパンの方法、また大量で発酵させるやり方、あるいは炭酸ガスを人工的に加える方法など、製造法も一通りではない。この国のワインは、主として普通のテーブル・ワインであって、健全で高価でない。どちらかというと、赤の方が、白やロゼより品質がややよいといわれる。ここで用いられるぶどうは、赤としてはカベルネ、マルべック、ピノ・ノワール、ガメー、バーべラ等が、白にはソービニヨン、セミヨン、マスカデル、シャルドネ、リースリング、パロミノなど、いずれもヨーロッパ系の品種が多い。またあとでふれるようにこの他に数百年前に教会士によって植えられた古い品種の子孫が残っていることも興味深い。【沿革】この地に始めてワインをもたらしたのは、イユズス会の会士達で、16世紀の中頃、神父の一人がこの地にぶどうの栽培を始めたという。400年前の品種のクリオラス種は今日でもその子孫が残って白とロゼの中心をなしている。近代のアルゼンチンのワインの物語は、この地に多くの移民を送ったスペインとイタリアの話になる。イタリア系の移民が、アンデスの雪どけ水をメンドサ州の砂漠地帯に引き入れ、この灌漑によって今日この州のぶどう栽培繁栄の基礎をつくりあげるに至った。もちろんこの100年の間の進歩ではあるが、この間にいろいろな災害や危難にあっている。フィロクセラもその一つである。しかし政府も業者も一つになってこの困難を克服している。メンドサ州には大学付属のぶどうとぶどう酒の研究所が設けられてあり、新興国ながらたえず研究と指導にカを入れている。【生産地帯】この国のぶどう生産地帯は三つに分けられ、メンドサ州とサンファン州およびリオネグロ地方である。(1)メンドサ州=この国の西部、アンデス山脈を隔ててチリと相対している。この地が開けたのは一世紀前のことであり、この広大な、乾き切った砂漠地帯に水を人工的に引き入れ、ぶどう栽培を始めたのはイタリアの移民であったことは既に述べた。現在アルゼンチンのぶどう酒の約80%はこの地区で造られている。多くの零細な業者の中にごく少数の大農場がある。これらは自己のぶどう園をもち、製造場を所有し、全アルゼンチナを通じての販売組織をもっている。そして新しいマスプロの体系を取り入れた醸造方法を採っているものもある。赤の生産が多く、品質も白やロゼよりはよいようだ。(2)サンファン=メンドサのすぐ北隣、同じようにアンデス山脈の麓である。同じ土質で、港概は常に必要な土地である。気候は全般的にやや暑い。ワインはどつしりした味の濃いタイブ。食後酒の製造に向けられる酒、ベルモット用のものがよく造られる。一方一般向きの食卓酒も造られる。(3)リオネグロ=メンドサ州のずっと南。ぶどうの量は少ない。しかし質的にはむしろ優れているとされる。土質は砂質的な所はやや少なく、石灰質の所がある。ヨーロッパ型の酒があり、南の方では軽い酒が、北の方では、辛口の白、そして発泡性のワインが造られている。

アルター・ワイン
カトリックの寺院で宗教上の儀式等に用いられるぶどう酒のこと。この酒は純粋で、一切何も加えない全くの生ぶどう酒である。

アルマニャツク
フランスの南西アルマニャック地方に産するブランデー。この地方で造られ、一定の規格(原産地呼称統制法)にあったもののみが許される名称である。コニャックに匹敵する優秀なブランデーである。アルマニャック地方は、ボルドーのさらに南西、ガロンヌ川の上流の一帯。ピレネー山脈に近く、越えればスペインである。古くからのぶどう地帯であるが、土質も肥沃でなく背の低いゴツゴツした樫の木や松がしげり、冬になると寒い風がピレネーの山々から吹きおろし、夏は焼けつくような太陽で燃えるようである。こんな極端な気候の所にアルマニャック・ブランデーは生れ、その気侯にふさわしいコクのある、やや鋭い、強烈な性質が形づくられたのである。このようにアルマニャックは砂質土壌地帯から生れた粗々しさが特長でコニャックは豊かな土質の所からその織細さを誇っているのだ。アルマニャックは現在バ・ザルマニャック(中心地オーヅ)、トナレーズ(中心地、コンドン)オー・クルマニャック(中心地、オーシェ)の三つの地帯の許された地域名をラベルで示すこともある。アルマニャックはバスケーズと呼ばれる平たい、丸々とした首の長いぶどう酒びんに入れられて市場に出ている。アルマニャックの製造に用いられる原料ぶどうはフォール・プランシェを主とし、数種類の品種が権威づけられている。しかしフォル・プランシェもサン・テミリオンやその他耐寒性の品種に次第に変りつつある。このような品種からのぶどう酒は一般に酸が多く、ワインとしては余り上等の方ではない。こうしたワインから、すぐれた香りのアルマニャックが生れるのも不思議であるが、この辺が蒸留と樽貯蔵の秘密であろう。それでこれを蒸留するのは、できるだけ早いうちに行なう。昔は多くの農家は自分で蒸留機をもっていなかったから、移動蒸留機をもって歩く蒸留の専門業者の手に任せるのが普通であった。旧式の機関車に似た移動式の簡単な蒸留扱が部落のあちらこちらで煙をあげながら蒸留するのは、アルマニャック地方ののんびりした風景であったものだ。しかし現在では業者は自らコニャックとはタイブの違った精留棚をもつポット・スチルを備付けている。蒸留は、コニャックと異なって一回だけ行なうのが普通であり、従ってブランデーも余り高いアルコール度のものは得られない。蒸留しておおむね63%をこえない程度のものを採取し、ガスコン産の樫樽に貯蔵する。もともと粗っぽいブランデーであるので、熟成には時間もかかる。しかしアルコール度数がうすいので、ある年月がすぎると熟成が早くなるともいわれる。蒸留に際してはアルコール以外の味と香りを与えるような物質をできるだけとばすようにしてある。その結果アルマニャックは、風味と匂いの基本的な要素を保持していることから、一年程度の貯蔵でさえも、驚くべき芳香をもち、飲むのには強すぎるといぅ。若いアルマニャックはコーヒーの中に入れると、強烈な芳香がばっと出るというので、しばしば用いられる。市販のアルマニャックはアルコール分40〜42%、モンテスキュー、シャトウ・ド・マーサン、オーバロン等が有名である。

泡立ち
ビールをコップに注ぐ時に、液面に泡ができるのが正常であり、これを泡立ちという。ビールの中には炭酸ガスが含まれており、これが容器の内圧となっているが、びんを開栓する際におこる圧力の減少と、同時にコップヘ注ぐ物理的な動揺によって、炭酸ガスの発散と空気の混入がおこり、これが泡をつくる原因となる。泡立ちを悪くする外的の要因にビールの冷し過ぎ、コップの内壁のよごれ(油類)がある。しかしビールの成分と泡立ち等の問題はかなり複雑で不明の点が多い。

泡持ち あわもち
ビールをコップに注ぐと、泡立ちが見られるが、この泡の持続性を泡持ちという。正常なビールを注げば、コップの泡は数分間消えないが、注ぐと直ちに消えてしまうもの、一分もたたぬうちに消えてしまうものは、泡持ち不良である。この原因は複雑である。

泡 盛 あわもり
沖縄で造られる米だけの焼酎。特殊な製造法で数百年前から造られ、日本の焼酎はここから薩摩を経て、やがて九州から本土へと伝わったのだという。泡盛の製法は、米(といっても外米ータイ、ビルマ産ー)を水につけて数日間おき、後、蒸して種麹をまいて麹室に入れ3〜4日で麹ができあがる。次に麹と水とを、土にいけたかめに仕込、10〜20日程度発酵させてのち、簡単な蒸留器で蒸留し、40〜50度の焼酎を得る。これをかめに入れて貯蔵熟成させる。間もなく小さなかめ(300ml〜400ml)に詰め芭蕉の葉でまいた栓をして市販にする。造り方はこれだけで簡単のようであるが、案外手がこんでいる。古い方法は米は全く洗わず糠のついたまま、水に数日つけておくと、ぬかの中の乳酸菌が繁殖して乳酸をつくり、つけ水は酸性になる。これをシー汁とよぶ。この酸性の水につけてこそ、硬い外米が柔らかく蒸せるし、麹もよくできるという。次は仕込でこれは麹と米だけで他の物は入らない、きわめて簡単な仕込をするのである。それからさらに使う麹、これは黒麹といわれ、胞子が黒から灰色で、清酒などに使う黄色い種と性質もやや違う。黄色い方は余り酸を作らないが、黒麹は主としてクエン酸を大量に造る。この酸が防腐的効力を発揮してもろみを酸性にし、暑い沖縄でも順調にもろみを仕上げることができるという。この黒麹は後に九州へも伝わり、鹿児島の芋焼酎等もこの黒麹を使うようになってから、もろみが腐らなくなったという。もちろん澱粉を糖にかえるカは黒も黄も同じようである。さて泡盛はこのようにして造られるが、今でこそ新酒がすぐ市場に出るが、古くからの方法はかなり長期にわたって調熟させるのが普通で、かつては200年ものもあったが、戦争で失われたのが多いという。一般に泡盛の熟成には沖縄の土でやいたかめやとくりが預かってカがあるとされている。このかめは高温でやいた釉薬をかけないもの。かめが熟成に一役を買うのも、スコッチの樽とくらべて興味深い。泡盛の歴史は南方の酒史である。16世紀沖縄で造られていたものはシャム−タイ−から釆たもので中国の露酒に似ているという明人の見聞記が残されている。これによると中国の露酒−高梁酒、白酒、茅台酒−という中国系の蒸留酒の造り方であって、固形もろみ−水を加えず、支那麹と原料だけで発酵させるという方式である。ところが18世紀に入って新井白石の表わしたものの中には、沖縄の泡盛の製法はシャムから伝わったのではなく、水を加えて造る日本酒の醸法と似ていることを述べている。現在タイにも泡盛によく似た酒はあるようだが、麹が全く違うこと、そして早くから泡盛は水を多量に加えること等をみると日本酒の古いタイブが残っていたとも考えられる。いずれにしても沖縄の泡盛の歴史は、日本の酒と中国の酒の接点という意味で興味のあるものである。また泡盛という名称は、一説は粟を用いたからこの名が生れたという説、また酒の泡立ちを利用してアルコール度数をみるということからきたのだという説など諸説ある。なお酒の泡立ちとは茶わんに一定量の水を入れ、これに測ろうとする焼酎を一定量入れてさじで泡を立たせる。次に別の茶わんに一定量の水を入れ、さきの泡立った茶わんの焼酎を注いで泡の立ち具合をみる、これをくりかえし、最後に泡がたたなくなったとき、用いた水の量の多少でアルコール分を決めるというやり方である。もっともこれはアルコールの科学約定量法のなかった時代、中国でも行なわれたのであって、沖縄のみではない。ただ本土人、おそらく薩摩の人がこれをみて珍しがって名をつけたのかもしれない。泡盛はアルコール分40〜45%、特有の香り、それは発酵で生成した香気の他、芭煮の葉を使えばその匂いも一緒になって、香りの高い焼酎となる。味はかすかに甘くまる味をおび、苦味や酸味があってはならない。現在7600kl(約四万石)程度造られ、内地にもかなり移入されている。

アンカー(紅麹)
中国麹の一種で、蒸した白米に毛かびを繁殖させたものである。胞子の色が深紅色なのでこのようによぶ。中国の南部および台湾でよく造られ、紅酒の製造に用いられる。紅槻の製造はなかなか複雑である。まずカッコンと称する種麹に相当するものを購入し、(あるいはの純粋培養を用いてもよい)これと米、米酒等でカッコントオとよぶ液状のものをつくる。これはのアルコール馴養である。さらにカッチェンと呼ぶ酸性液でを酸馴養し、これからカッチェントオを造り、最後に白米とカッチェントオとで仕込んで白米に十分かびを増殖させる。これを乾燥してアンカーができる。このものは、かびの他に酵母が繁殖しており、日本酒の麹と酒母の混合物のような役割を果す。

アンゴスチュ
苦味剤の一種。ラム酒をベースにしたもので、トリニダッド島産である。このものは古く南アメリカ解放の際シーガード博士というフランス人が軍医総監としてベネズエラにやってきた。彼は熱帯性の気侯が人々の身心を無気力にする影響を防ぐため、いろいろな薬草や木皮から、苦味料を探しもとめ、その結果得られたのが、 このアンゴスチュラである。この名はベネズエラのポリバー市の旧名である。現在このものは栽培され、酒を始め多くの飲料、食品の苦味料として広く用いられている。製法はシーガード家の秘法であるどいう。

アンジェリカ
非常に甘い、カリフォルニア産の混和ぶどう酒。一部分発酵させたぶどう果汁と、ブランデーをまぜたもの。なお別にセリ科の植物に同名のものがあり、これは薬草としてリキュールの製造に用いられる。

アンジュー
フランス西部のはぼ中央、いまメーン・エ・ロアール行政区に属している。ロアール川両側の丘陵地帯と谷は、古くからアンジュウと呼ばれ、有名なぶどう酒の産地である。この地はまた古くイギリスのプランタジェネット王朝の生れた土地でもあるという。東はトクレーンに、西はブリタエーに接し、アンジェがこの付近の中心地である。アンジュウ・ワインはもちろん原産地呼称統制法の適用を受け、白の甘口のテーブル・ワインが約6割、残りがバン・ロゼ(いわゆるアンジュウ・ロゼとして有名な酒)である。他に辛口の白、普通の赤もみられる。またこの地域にあるソーミュエール付近は発泡ぶどう酒でその名が知られている。アンジュウ・ワインは一般に新鮮で力強い酒である。使用しているぶどうは白の甘口にシェニー・ブラン(ピノー・ド・ラ・ロアール)が、また赤やロゼにはカベルネ種が用いられている。なおアンジュウは、さらに幾つかの地区に区分され、そのうち、コトー・ド・ラ・ロアール、コトー・デュ・レイオン、ソーミュエールなどが有名である。

紅酒 あんちゅう
中国の南から台湾にかけて造られている赤色の酒である。紅糊と精米を米酒に浸して造る一種の混成酒である。古いものを老紅酒と呼んで賞美される。その原料の配合割合は、さまざまであるが、蒸米と紅糊との比は2対1.2位いである。まず蒸した精米と紅抽と水を180L程度のかめに仕込み、十分まぜておく。このものは20〜30時間で紅抽中のかびが繁殖し温度は上昇し、酵母も発酵が始まる。6日前後で発酵は終りアルコール15〜17%、酸量0.6〜0.8%(乳酸)となる。7日目、米酒を使用量の半分だけ加え、約一週間後上澄液をとり出して別の容器に入れ残りの酵にさらに米酒の半量を加え一遇間程度放置する。この間に紅抽の色素等は充分抽出される。再び上澄液をとり出して前の液と合併し、残りのもろみは袋に入れて圧搾する。濾液は前の上澄液と合せ、浮引きを行なって、新紅酒が出きあがる。全体で約17〜20日間かかる。新紅酒は一旦濾過をしてから30立容のかめに詰め、木蓋を施し、目張りをして貯蔵庫に入れる。製品となるのは数ケ月後である。なお老紅酒(老酒) は一年以上を経過している。最初は名前の通り深紅色であるが、一年以上経過すると淡黄色に変わってくる。紅酒はアルコール分21〜23%、酸量0.16〜0.2%(乳酸)、エキス分0.8度、やや酸味を感じる酒で、日本酒に比して内容がうすい。渋味があり、爽快な香気をもっており、貯蔵が長くなる程熟成して風味を増すのが特長である。